苗木地方産の新鉱物


苗木地方から発見された2種の新鉱物(鉱物の新種)を紹介します。

新鉱物とは

そもそも「鉱物」とはなんなのでしょう。

簡単に言ってしまえば,地球(ほし)をつくっている最小単位のツブツブ。人間でいえば細胞にあたるのが「鉱物」です。ただし,細胞と違って生命はありません。

ちなみに,「岩石」は鉱物の集合体です。人間でいえば臓器でしょうか。

鉱物は,基本的には固体で,種類ごとに決まった材料(成分)が決まった配置で並んでいます(結晶)。

新鉱物とは,これまでに知られていなかった新種の鉱物のことです。鉱物種は化学組成(成分)と結晶構造によって定義されていますので,そのどちらか(あるいは両方)が既知の鉱物と異なれば新鉱物となります。新鉱物といえるか否かは,国際鉱物学連合(IMA,世界各国の鉱物学会の国際的な連合組織)の新鉱物・命名・分類委員会で審査して決定されます。

鉱物種の数

現在までに知られている鉱物は約5,500種あります。(2020年5月現在:5,565種)

日本国内ではこのうち約1,300種が産しています。

ただ,岩石をつくる鉱物の種類はふつうそれほど多くなく,造岩鉱物と呼ばれる数十種程度の鉱物でほとんどの岩石ができています。

プロト鉄直閃石

Proto-ferro-anthophyllite[EB06050001]

プロト鉄直閃石てつちょくせんせき[EB06050001]

岐阜県中津川市蛭川(田原)
標本左右約4cm
右の円内は赤矢印部の拡大

赤矢印の先の放射状結晶集合体

中津川市蛭川のペグマタイトから発見されました。

角閃石かくせんせきグループの鉱物で,ペグマタイト中の鉄かんらん石に伴って,繊維状の結晶が放射状に集合して産します。

この角閃石は,それまで知られていた直閃石ちょくせんせきとは結晶構造が異なることがわかり,1986年に新鉱物として認められました。その後,角閃石の命名規約改定に伴って,改めて定義しなおされました。

セリウムヒンガン石

Hingganite-(Ce)[EB06020001]

セリウムヒンガン石[EB06020001]

岐阜県中津川市蛭川(田原)
結晶長さ約1.8mm

イットリウムヒンガン石との微細な結晶集合体

中津川市蛭川のペグマタイトから発見されました。

イットリウムヒンガン石のイットリウム(Y)をセリウム(Ce)で置き換えた鉱物で,イットリウムヒンガン石と微細な結晶集合体(累帯構造るいたいこうぞう)をなして産します。

イットリウムヒンガン石は,1980年代はじめに中国で発見されました。ヒンガン石の名まえは中国の原産地名(興安ヒンガン)に由来します。蛭川でも同時期に発見されていたのですが,僅差きんさで中国側の申請が早く,残念ながら蛭川産の新鉱物とはなりませんでした。

しかし,蛭川のヒンガン石にはセリウムが卓越する部分があり,ごく微小な領域の分析研究によって,イットリウムヒンガン石とは別種の鉱物であることが確認され,新鉱物セリウムヒンガン石として認められました。


参考になる鉱物博物館の出版物

文献

  • Hawthorne, F.C., Oberti, R., Harlow, G.E., Maresch, W.V., Martin, R.F., Schumacher, J.C. and Welch, M.D. (2012) Nomenclature of the amphibole supergroup. American Mineralogist, 97, 2031-2048.
    DOI 10.2138/am.2012.4276 PDFで読む
  • 松原 聰 (2006) 新鉱物発見物語. 岩波科学ライブラリー 115, 岩波書店, 127p.
    ISBN 978-4-00-007455-1
  • 宮脇律郎・中井 泉・長島弘三・岡本鑑吉・磯部敏雄 (1987) 岐阜県恵那郡蛭川村田原の日本新産鉱物,ヒンガン石,ヘランド石,ウォッジナ石. 鉱物学雑誌, 18, 17-30.
    DOI 10.2465/gkk1952.18.17
  • Miyawaki, R., Matsubara, S., Yokoyama, K. and Okamoto, A. (2007) Hingganite-(Ce) and hingganite-(Y) from Tahara, Hirukawa-mura, Gifu Prefecture, Japan: The description on a new mineral species of the Ce-analogue of hingannite-(Y) with a refinement of the crystal structure of hingganite-(Y). Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 102, 1-7.
    DOI 10.2465/jmps.051212
  • Sueno, S., Matsuura, S., Bunno, M. and Kurosawa, M. (2002) Occurrence and crystal chemical features of protoferro-anthophyllite and protomangano-ferro-anthophyllite from Cheyenne Canyon and Cheyenne Mountain, U.S.A. and Hirukawa-mura, Suisho-yama, and Yokone-yama, Japan. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 97, 127-136.
    DOI 10.2465/jmps.97.127